【作品のみどころ】
2005年公開の映画で原作は東野圭吾のミステリー小説でドラマ化もされて人気を博しているガリレオシリーズの第3弾。
福山雅治演じる主人公の湯川は帝都大学の准教授で物理学の分野ではずば抜けた頭脳を持ち、その能力を生かして事件を解決していきます。
今作品は湯川が追っている事件の裏で手を引いているのが、湯川の学生時代の友人である天才数学者の石神という人物。お互い天才同士の激しい頭脳戦も見どころのひとつです。
特に石神哲哉という個性的な数学者を演じた堤真一が独特の世界観を持つ天才という役を見事に演じ切っています。
劇中の随所にヒントや伏線が張られていて、自分でも思考をめぐらしながら見るのも面白く、すべてが明かされるクライマックスは特に要注目です。
【キャスト一覧】
湯川学(福山雅治)
内海薫(柴咲コウ)
草薙俊平(北村一輝)
石神哲哉(堤真一)
花岡靖子(松雪泰子)
花岡美里(金澤美穂)
【みんなの感想】
原作本も読みましたが、本の世界観を損なうこと無く上手く表現できていると思います。キャスティングも良く、特に堤真一さんの演技が素晴らしいです。普段は渋くかっこいい堤さんがどう見ても冴えない数学教師に見えるのですから。また、松雪泰子さんも幸薄い儚い役をうまく演じています。残念ながら主役の福山雅治さん、柴咲コウさんの印象はこれと言って残りませんでした。それだけ、堤さん、松雪さんの演技が良かったです。ストーリーも東野圭吾さん作なので、安定の面白さです。トリック、伏線などミステリーとしても非常に面白く満足できる作品だと思います。映画のラストで「容疑者Xの献身」というタイトルが心に深く響いて、泣けました。★★★★★(星5つ)
派手なアクションなどはない本作ですが、犯人と湯川先生、そして関係者の心理戦、感情の揺れ動きに非常に引き込まれる作品でした。数学者VS物理学者というテーマだけあって、綺麗な筋道で話が展開していくので、途中でもやもやしたりすることなく観終わりました。犯人の用意したトリックや、警察の先を読んだ準備などが秀逸で、つい美しいと思ってしまいました。そんな美麗な展開の中にあって、人間の感情という不確定要素がいいスパイスになっており、「儚くも美しい犯罪」という言葉がぴったりの事件だったと思います。観終わってすっきりはしましたが、どこかせつない気持ちも残りました。犯人やその関係者が、この先の未来で幸せになることを切に願うばかりです。★★★★★(星5つ)
終始切ないストーリで、正義や正しさというのは人によって様々であるということを改めて考えさせられる映画でした。全くわからなかった謎を解いていくことを楽しんでいたり、普段は理路整然としている湯川先生が初めて謎を解くことを躊躇し、迷った姿や、それまでの人生頑張ってきたことが報われず家族のために進みたい道にも進めず、学生たちに馬鹿にされ自暴自棄になっていた石神が恋をし、生きる意味を見出してくれた靖子のために自分の残りの人生を捧げた姿が切なく、しかし、自分の中の正義に従い行動する姿がまさしく、人生は選択の連続で一つ一つの選択がいかに自分にとって大切なもので、意味があるものであるかということを考えさせられる映画でした。★★★★★(星5つ)
とにかく泣ける映画です。主役の二人以上に、石神を演じる堤真一の演技が素晴らしい。サスペンスであり、ミステリーでもあり、全体の雰囲気で言えば暗いとも言えるのですが、「献身」と銘打った愛情の深さがそれらを喰って極上の人間ドラマにしています。伏線の描き方もとても鮮やかで、石神の数々の行為は単なるストーカーなんじゃないかと、途中で観客は騙されてしまうでしょう。情の深い人間ではなく、多分善い人間でもなく、ただただ花岡母娘だけを一方的に愛した石神。彼女らを助けるためなら何の罪もない人をあっさりと殺せる石神。それだけのリスクや労力を負いながら、彼女らを幸せにできるのは自分じゃなくても良い、自分は消える覚悟がいつでもできていると思える愛情はすごい。こういう相手には求めない、ただひたすら命すら惜しまない愛情って、親から子に対するものに近いなあと、切なくなりました。★★★★★(星5つ)
ドラマのガリレオシリーズをすべて見てない私でも引き込まれる作品でした。話の構成的に面白かったのが、通常の推理モノの作品では主人公にあたる事件を解決する側に感情移入することが多いですが、この作品は容疑者側に感情移入することができました。
殺人を犯してしまった親子と、その親子を守るためにアリバイを作りをした数学教師。この二組の関係性や心理描写は見ていて切ない部分があります。推理作品の肝になる事件のトリックについては、最後の最後まで分からず驚きました。事件の内容的に衝動的な殺人だったので面白みがないかと思いましたが、数学教師が作ったアリバイ工作が巧妙で映画序盤に出てくるホームレスのシーンの伏線回収は鳥肌が立ちました。★★★★★(星5つ)
言わずと知れたミステリー小説家東野圭吾さん原作の映画で福山雅治さん主演ドラマ「ガリレオ」シリーズの映画版ということで非常に期待値も高かったですがシンプルに期待を裏切らない完成度だったと思います。数学教師を演じる堤真一さんと今作のヒロインである松雪泰子さん演じる未亡人との儚げな大人の恋模様も美しく描かれ、登場人物たちの迫真の演技に心を奪われるばかり。また「ガリレオ」名物であるトリックを解いていくシーンも相変わらず秀逸で、非常に見ごたえがありました。クライマックスの堤さんが泣き叫ぶシーンには心をうたれるものがあり、献身という言葉の持つ美しさと狂気を深く感じることができる1作です。★★★★(星4つ)
ガリレオシリーズは好きでいろいろ観ています。ストーリーは最初はありがちな話な展開だと思いましたが、娘を守りたいは母親の気持ち、好意を持っている人の助けになりたいと思う男などの描写がとてもわかりやすく、テンポ良く進んでいて、すぐに入り込んでしまいました。そこから始まり、そこから隠蔽のためのトリックや、登場人物の心情などの描写もとても良かったです。それぞれの気持ちに感情移入できました。結局は殺人という罪を犯してしまい、本当に悪い人ではないのに、やりたくてやったわけではないのに、最終的に誰も幸せになれずに終わったので、見終わった後とても切なく悲しい気持ちになりましたが、とても面白かったです。★★★★★(星5つ)
テレビシリーズや映画「真夏の方程式」も見ましたが、初めて見たガリレオ作品がテレビ放送されていたのが、この「容疑者Xの献身」でした。そのため、特別な感情や予備知識が一切なく、フラットに作品と向き合えたと思います。そして自分は見事に容疑者Xが思い描いたとおりに物事を捉えてしまった一人です。それだけ作品の出来や、堤真一さんの演技が素晴らしかったのだと思います。おそらく見た方の大半が持つ感想だと思うのですが、ラストシーンの嗚咽が特に印象に残りました。その後、自分は小説版も読んだのですが、実はこの“容疑者X”のイメージが結構違います。もちろん内面の設定は同じですが、外見が随分と違うのです。もし、小説版そのままのイメージの俳優さんを起用したならば、もっと“狂気じみた面”が出たかもしれないと思ってます。しかし、堤真一さんだからこそ出せた“容疑者X”像があったので、個人的には堤さんで大正解だったのだと思います。★★★★(星4つ)
犯人の数学家の気持ちが少しわかります。私も、全てが嫌になり、全ての人が敵に見える程、精神的にしんどい時に、優しく声をかけられると、好きとかの感情ではなく、ふと我に帰って自分は何をしていたのか?何を考えていたのか?と感じてしまい、その人が恩人かのように思ってしまう事があります。それに対し、友達であったガリレオは、犯人の事をよくわかっているし、捕まえたくない、認めたくないと思いながらも、犯人と立証してしまったので捕まえないといけない。犯人が誰かわかり、捕まったのに、どこか嬉しい気持ちはなく、笑顔がないこの心情も、とてもよく描かれていたと思いました。そして、ドラマの様な方程式を計算するような派手な演出がなかったのも、しっかり観る事が出来て良かったです。★★★★(星4つ)
タイトルどおり、容疑者石神さんの献身ぷりが切なくてちょっとホロリ。そして、昔からの友人である石神さんの挙動に気づいてしまった湯川さんの気持ちや葛藤がとても人間っぽく感じてグッときました。
私の勝手な偏見ですが、理系の人ってちょっと冷たいイメージというか、『人の気持ち』みたいに理論で片付けられないものはどうでもいいと思っているように感じていたんですが、この映画を見ると「理系の人たちも人間のことをこんなに考えたりするのかな」と感じてちょっと温かい気持ちになりました。…まぁ、ガリレオシリーズなので扱っているのは殺人事件なんですが(笑)
あと、獄中の3色問題のシーンは本当に感動しました。「数学が大好きな人の頭って、あんな感じになっているのかな」と、自分にはない世界観を見た気がします。また見たいです。★★★★★(星5つ)